工法概要
工法 | 粉末焼結造形 |
---|---|
樹脂 | PA12(ナイロン粉末) |
積層ピッチ | 0.1mm |
使用装置 | Sinterstation HiQ |
後処理 | 研磨・ウレタン塗装 |
-
東京芸術劇場コンサートホールのパイプオルガン
東京芸術劇場コンサートホールのパイプオルガンは、世界でも類をみない180度回転して装いを変える独自のシステムを搭載しています。回転することでクラシックなスタイルと現代的なスタイルを両立しており、東京芸術劇場の目玉の1つとして長年活躍しています。
"このコンサートホールは現代的な装いをもっています。ここにヨーロッパの教会オルガンのようなデザインをもってきたのでは調和しません。一方、17-18世紀のオルガン音楽が鳴ったとき、それに相応しい外観も欲しくなります。このジレンマを解決するために、回転方式を考えました。”(東京芸術劇場 WEBサイトより引用:https://www.geigeki.jp/house/organ.html)
東京芸術劇場コンサートホールのパイプオルガン
視覚に障害のあるお客様のための触る模型として製作
東京芸術劇場では、視覚に障害のあるお客様にコンサートをより楽しんでいただくために、鑑賞前に公演説明会を行うなどのサービスを提供しています。この模型は、そのようなシーンで舞台美術の設計や形状を伝えるためのツールとして日本舞台美術家協会が企画する『触る模型』シリーズの一つとして製作協力させていただきました。
また、模型も実物と同様に、2つのスタイルを切り替えられるようリバーシブルで製作しています。(一般社団法人 日本舞台美術家協会 WEBサイト:https://jatdt.or.jp/%E7%A0%94%E7%A9%B6/
模型(バロック面)
模型(モダン面)
耐久性を重視し粉末焼結造形(ナイロン粉末)の3Dプリンターで製作
模型の製作にあたって、「安心して触れるものであること」「一般的な展示模型と比べて耐久性があること」という条件があったため、3Dプリンターのなかでも強度と耐久性に優れる粉末焼結造形を選択しました。
粉末焼結造形の3Dプリンター
造形後の取り出し作業
塗装により金属光沢や触感を再現
視覚に障害のあるお客様のための模型として、触った感触が非常に重要でした。今回は粉末焼結造形特有のざらつきをそのまま生かして木の質感を表現し、パイプやレリーフなど実物で金属製の部分は、研磨・塗装を行うことで滑らかな質感を表現しました。また、弱視の方にもパイプオルガンの色味を体験していただきやすくするため、実際の色味より濃くするなどの調整を加えています。
東京芸術劇場コンサートホールにて展示
2019年末の模型製作直後に新型コロナウイルス感染症が流行したことから、2021年6月現在、来場者の方に実際に触っていただくことはほとんどできていないものの、出来栄えは一般のお客様にも非常に好評との評価をいただきました。現在はパイプオルガンコンサートが開催される際に展示されていますので、ぜひ模型もご覧ください。
東京芸術劇場での展示風景