3Dプリンターは、試作品やモックアップの造形にかかる時間短縮を実現できるため、さまざまな業種で導入が進んでいます。しかし、これから導入を検討している企業担当者にとって、費用対効果の面からも具体的にどれくらいの時間短縮が実現するのかは大いに気になるところではないでしょうか。
そこで今回は、単純に造形にかかる時間に加え、試作品の検討からできあがるまでの時間、設計開発全体の時間短縮がどれだけ実現できるのかについて解説します。
3Dプリンターの概要
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3Dプリンターとは、3D CADやモデリングソフトで作成したデータを、プラスチック(樹脂)や金属などの素材を使い立体物を造形するプリンターです。
1980年代以降、3Dプリンターは主に自動車や家電製品の部品サンプル作成に活用されていました。しかし、現在では利用できる素材が増えたことや低価格化が進んだことで、医療やファッション、食品などさまざまな業種で活用されています。
3Dプリンターについてより詳しくは、「3Dプリンターとは?特徴や造形原理、メリットと選び方を解説」をご覧ください。モデル造形にかかる時間の目安
モデルの種類、素材や大きさ、3Dプリンターの性能、印刷方式などにより造形にかかる時間は同じではありません。ここでは光造形におけるシミュレーション結果を基に、モデル造作にかかるおおよその時間について紹介します。
なお、光造形では、体積、高さ、積層ピッチが主な変動要素ですが、そのなかでもダイレクトに造形時間に影響するパラメータである「ピッチ」別の時間目安を見ていきます。
3Dプリンターでモデル造形にかかる時間
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3Dプリンターを活用する大きな理由の1つが時間短縮ですが、実際に試作品やモックアップの造形にどの程度の時間がかかるのでしょうか。まずは、3Dプリンターでのモデル造形にかかる時間を決める要素について簡単に解説します。
・積層ピッチ
3Dプリンターは、樹脂や金属などの素材を1層ずつ積上げる形でモデルの造形をしますが、その際の1層の厚みが積層ピッチです。通常、積層ピッチの厚みは0.1~0.3mmが一般的ですが、厚みがあればあるほど造作にかかる時間は短縮されます。
・ヘッドスピード
ヘッドスピードとは、印刷速度を示すもので、ヘッドスピードが速いほど造作にかかる時間も短くなります。
・充填率
充填率とは、モデルの中身に素材をどれだけ詰め込むかの割合を示すものです。充填率を低く設定する、つまり空に近づくほど、造作時間は短縮されます。
なお、ヘッドスピードと充填率については、FDM(熱溶解積層方式:Fused Deposition Modeling)の場合での時間です。
3Dプリンタ―の種類については「3Dプリンターの種類は? 造形方式別の特徴、メリット・デメリットを解説」をご確認ください。モデル造形にかかる時間の目安
モデルの種類、素材や大きさ、3Dプリンターの性能、印刷方式などにより造形にかかる時間は同じではありません。ここでは光造形におけるシミュレーション結果を基に、モデル造作にかかるおおよその時間について紹介します。
なお、光造形では、体積、高さ、積層ピッチが主な変動要素ですが、そのなかでもダイレクトに造形時間に影響するパラメータである「ピッチ」別の時間目安を見ていきます。今後新素材の開発が進めば、さらに別の特性を持つ樹脂素材が登場する可能性もあります。よりよい製品をつくるためには、多様な特性を持つ素材のなかから、用途に適した素材を選んで使用することが重要です。
では、どの素材をどういった場合に選べばよいのでしょうか。次に素材ごとの特徴を見ていきましょう。
3Dプリンター活用でどの程度の時間短縮が可能か
3Dプリンターでモデルを造作するときに、単純に出力が完了する時間だけで見ると、場合によってはそれほど時間短縮につながらないケースも少なくありません。しかし、重要な点は出力が完了する時間だけで見るのではなく、試作品の検討から実際にできあがるまでの時間がどれだけ短縮できるかにあります。なぜなら、3Dプリンター活用による最大のメリットは、高速試作が可能だからです。
例えば、切削加工などの従来の加工方法で試作品を外注する場合、注文から実際にできあがるまでには、加工業者との打ち合わせだけで1~2週間かかります。しかし、3Dプリンターはデータさえあれば、外注した場合であっても早ければ2~3日で造作することが可能で、これにより、設計時間の大幅な短縮が可能になります。
また、顧客との打ち合わせなどで、開発中の製品がどのように動くかといったイメージを図面だけで伝えるのは非常に困難です。試作品を見ながらやり取りを行えば、すり合わせの工数を減らすことができます。3Dプリンターであれば、試作品の造作や修正を短期間で行えるため実現が可能になります。
3Dプリンターでの造形時間を短縮するコツ
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実際に3Dプリンターを導入後、造形時間を短縮するにはどのようなポイントがあるのでしょうか。ここでは、出力を完了させる時間の短縮と、設計開発全体の時間短縮の主なコツに分けて解説します。
出力を完了させる時間短縮のコツ
・3Dプリンターの設定を調整する
3Dプリンターの速さを決める要素で紹介した設定の調整で出力の時間短縮が可能です。ただし、設定の調整で速度を速めた場合、デメリットが発生する場合もあるため注意が必要です。
例えば、積層ピッチを0.1mmから0.3mmに変更すれば出力の速度は上がります。しかし、積層痕が目立ち造形されたモデルの精度は落ちるため、繊細を求めるものや複雑なモデルの作成などには向いていません。
また、ヘッドスピードの速度を速めた場合は、表面が粗くなるうえに機器への負担が増加する可能性があります。その他にも、充填率を下げれば試作品自体の強度が弱くなってしまうでしょう。
設定変更による速度アップは何かしらのデメリットとのトレードオフになるケースがほとんどです。そのため、社内での確認用だけで使う、表面部分や外壁部分など目に触れる部分の速度は落とすなどの工夫も欠かせません。
・大きなサイズのモデルはパーツ分けする
大きなモデル、具体的には1辺が50cmを超えるモデルを出力する場合、1回の工程で出力してミスがあった場合は、最初からすべてやり直しになります。また、単純に大きなモデルは出力に何十時間もかかる可能性も高いため、複数のパーツに分けて出力する方法がおすすめです。ミスの修正も少なくなり、コスト削減にもつながります。
・サポート材とモデル材のノズル切替を少なくする
サポート材とは、出力するモデルが複雑な形状であったり、空中に浮いている部分があったりした場合に、出力中に自重で潰れるのを防ぐために設置する土台です。モデル材(出力するモデル自体の素材)とサポート材のノズル切替を少なくすることで、時間短縮を図ることが可能です。設計開発全体の時間短縮のコツ
・3Dプリンターを活用できる人材の雇用・育成
3Dプリンターを活用し、試作品やモックアップなどの設計から完成までの時間短縮を実現するには、3Dデータの作成、データ編集などの知識を持った人材が欠かせません。さまざまな種類のある3Dプリンターから適切な種類を選択し、効果的に活用できる人材の確保もしくは育成も進めていかなければすべて内製による時間短縮は難しいでしょう。
3Dプリンター出力サービスを活用する
3Dプリンターでの出力を外部サービスに依頼するのも1つの方法です。社内に3Dデータを作成できる人材がいなければ、専門知識を持った外部スタッフが最適な出力を行います。用途に応じてさまざまな印刷方法を駆使できるため、自社で3Dプリンターを維持管理するコストの削減も可能です。
また、3Dデータではなく、2Dの図面しかない、イラストしかない、といった場合でも、3Dデータ作成からの支援も可能で、迅速な3D出力を実現します。
3Dプリンターの造形時間短縮のポイントは出力サービスの活用
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試作品やモックアップなどの造形時間短縮に大きな効果を発揮する3Dプリンターですが、モデルの基となる3Dデータの作成・編集ができる人材がいなければ、3Dプリンターだけを導入しても時間短縮は難しいでしょう。
また、ひと口に3Dプリンターといっても、その種類は多様であり、自社の目的を果たすにはどの3Dプリンターが必要であるかの理解も欠かせません。
そこでおすすめしたいのが、JMCの3Dプリンター出力サービスです。3Dデータがあれば最速での出力が可能です。2Dデータやイラストだけでも3Dデータを作成し、出力できます。3Dプリンターを使い、試作品やモックアップなどの造形時間短縮させたいが人材がいない、とりあえずどのようなものかを試したいなどの際は、お気軽にご相談ください。